好きな車を仕事に。館林から全国へ走り出す「オートガレージKazu」のものづくり
人生、何がきっかけで大きく変わるかわからない。
人との出会いによって人生が変わることもあれば、一つの商品との出会いが会社の未来を変えてしまうこともある。
今回お邪魔したのは、群馬県館林市でキッチンカーの製造・販売を手掛ける「オートガレージKazu」。
北海道から沖縄まで全国に顧客を持ち、石垣島への納車実績もあるという。
しかし、最初からキッチンカーを製造していたわけではない。
その始まりは、実にシンプルなものだった。
「車が好きだった」
好きなことを仕事にする!
創業は1993年頃。
もともとはサラリーマンだったという創業者。
二日勤務して二日休むという勤務形態だったことから、休みの日を利用して自動車販売店でアルバイトを始めた。
理由は、車が好きだったから。
好きな車に触れて、お金までもらえる。
そんな経験から、自分でも車の売買を始めるようになった。
最初は会社員との二足のわらじ。
ところが、次第に車の売買による収入が本業の給料を超えるようになった。
24〜25歳の頃、「やるなら今しかない」と独立を決意したという。
好きなことが仕事になり、やがて自分の会社を持つことになった。
一台の下取り車が会社を変えた!
中古車販売を続けていた同社に、ある日、一台のキッチンカーが下取りで入ってきた。
販売してみると、予想以上の反響があり、すぐに売れてしまったという。
ここで面白いのが、その後の行動だ。
普通なら「キッチンカーは売れるんだな」で終わってしまうところだろう。
しかし、オートガレージKazuは違った。
「これ、自分たちでもつくれるんじゃないか?」
そこでキッチンカーを徹底的に研究。
車両を分解して構造を調べ、必要な部品を割り出し、自社で製造するためのノウハウを積み上げていった。
そして、中古車販売からキッチンカーの製造・販売へと事業を転換していく。
一台の下取り車との出会いが、会社の進む道を変えてしまったのである。
同じものは一台としてない!
現在、同社が製造するキッチンカーは、顧客の要望に合わせたオーダーメイド。
何を販売するのか。
どんな設備が必要なのか。
どのような動線なら使いやすいのか。
それぞれの商売に合わせて、一台一台つくり上げていく。
しかも、デザインからエアロパーツ製作、塗装、ラッピングまで、社内で一貫して対応できる体制を整えている。
スタッフも自動車整備の経験者だけではない。
大工など建築関係の技術を持つ人材も加わり、それぞれの専門技術を生かしているという。
車をつくる技術だけではなく、建築や加工の技術まで組み合わせているところが面白い。
ブームが去っても残るもの
キッチンカー市場は、ここ数年で大きく変化した。
同社が事業を始めた頃、インターネットで確認できた全国の同業者は20〜30店程度だったという。
ところが、キッチンカーブームやコロナ禍を背景に参入する事業者が急増。
競争も激しくなった。
さらに材料費も高騰。
事業開始当初と比べると、材料費は1.6〜1.7倍になっているという。
そんな状況でも、同社が大切にしているのは品質だ。
例えば、重量のある木材や鉄だけに頼らず、軽量なアルミを使用するなど、独自の工夫を重ねている。
価格だけで競争するのではなく、ものづくりの技術で勝負する。
その積み重ねが、全国からの注文につながっているのだろう。
館林から全国へ!
もともとは邑楽町に拠点を構えていたが、事業拡大に伴って館林市へ移転した。
現在では北海道から沖縄まで、全国に顧客がいる。
最近では石垣島への納車実績もあるというから驚かされる。
館林でつくられたキッチンカーが、全国各地で商売をしている。
そう考えると、何だか面白い。
そして、同社が手掛けてきたのはキッチンカーだけではない。
キャンピングカーの製作実績もあるという。
これまで培ってきた加工技術や製造ノウハウを組み合わせれば、まだまだ新しい可能性がありそうだ。
キッチンカーの向こう側には「人」がいる
今回の取材で、もう一つ興味を持ったことがある。
それは、全国へ送り出したキッチンカーの「その後」だ。
一台のキッチンカーを購入した人は、今、どこで、どんな商売をしているのだろう。
開業して順調にいっている人もいれば、苦労を重ねながら頑張っている人もいるだろう。
一台のキッチンカーの向こう側には、一人ひとりの人生がある。
考えてみれば、キッチンカーを製造するという仕事は、単に車を販売するだけではない。
誰かが新しい商売を始めるための「場所」をつくっている仕事でもある。
店舗を構えるのとは違い、自分からお客さんのいる場所へ出向いていく。
その小さな空間から、新しい商売や人との出会いが生まれていく。
そう考えると、キッチンカーというものが、これまでとは少し違って見えてくる。
好きだった車を仕事にした一人の青年。
一台の下取り車との出会いから、新しい事業が始まった。
そして今、その会社がつくったキッチンカーが全国各地を走っている。
一つの出会いから、また新しい物語が生まれていく。
オートガレージKazuの話を聞きながら、そんなことを感じた。
これからどんな一台が、館林から走り出すのだろう。
楽しみである。