「油を使うのが当たり前」を変えられるか
60歳からの挑戦。「一八商会」が提案するアルカリ電解水という選択
「鉄を削る現場は、油まみれが当たり前。」
長年、製造業に関わってきた人ほど、そう感じるかもしれない。
だが、その“当たり前”を変えようとしている人物がいる。
2024年3月に創業した「一八商会(いちはちしょうかい)」代表の池田氏だ。
鉄鋼業界で約40年。現場を知り尽くした池田氏は、60歳で定年を迎えた後、「雇用延長」という道ではなく、新たな挑戦を選んだ。
背景にあったのは、コロナ禍や米中貿易摩擦、中東情勢による原油価格高騰など、製造業を取り巻く大きな変化だった。
「これまで通りでは厳しい。だからこそ、新しい価値を提案したかった」
そうして出会ったのが、“アルカリ電解水”による金属加工技術だった。
水なのに、金属が削れる?
一八商会が提案するのは、水を電気分解し、強アルカリ性にした特殊な液体。
これを工業用の切削液として活用することで、ステンレスなど硬い金属の加工性能を高めることができるという。
さらに特徴的なのは、「油を使わない」こと。
従来の油性切削液は、
廃液処理コスト
腐敗臭
床の滑り
工場内の油汚れ
作業着の洗濯問題
など、多くの“見えない負担”を抱えていた。
特に近年は、SDGsへの対応や原油価格高騰の影響から、油そのもののコストが上昇。現場では「仕方ないコスト」とされていた部分が、経営課題になりつつある。
アルカリ電解水は、その課題に対する一つの答えになり得る。
「単価」ではなく「全体」で見る時代へ
池田氏が繰り返し語っていたのは、「単価だけでは見えない」ということだった。
例えば、
工具寿命の向上
廃液処理費の削減
ミストコレクター不要
清掃時間の削減
作業環境改善
洗濯負担の軽減
こうした“付帯コスト”まで含めて考えると、現場全体の負担は大きく変わる。
「経営者は、現場の掃除や洗濯にかかる時間も“コスト”として考えなければいけない時代になっている」
その言葉は、単なる製品説明ではなく、現場を40年見続けてきた人間だからこその重みがあった。
顔を合わせて伝える
現在、一八商会は日本フルードシステム社と提携し、正規代理店として活動している。
だが、池田氏は大々的な広告戦略よりも、“まず使ってもらう”ことを重視する。
スプレー缶などで試してもらい、現場で実感してもらう。
そして、経営者や現場担当者と直接話す。
効率化が進む時代だからこそ、最後に必要なのは「人と人との信頼関係」なのかもしれない。
製造業の未来は、最新設備だけで変わるわけではない。
現場の“当たり前”を疑うこと。
そこから、新しい時代のものづくりが始まる。
企業名:一八商会
代表:池田実
住所: 館林市堀工町1624
TEL:080−9685−0907
営業時間:9時〜5時
定休日:土日祝日
