フレンチベースの技術を存分に活かした料理が味わえるお店! 「食材を無駄にしない」という哲学
館林のまちの一角に、静かに時間を重ねてきたレストランがある。「トロアの森」。
1998年8月の創業以来、派手な看板を掲げることなく、それでも確実に“知る人ぞ知る店”として根付いてきた洋食店だ。
扉を開けてまず感じるのは、どこか落ち着いた空気感だ。料理を待つ時間さえも心地よい。
そこに流れているのは、シェフの“姿勢”そのものだと感じた。
東京で大手レストランやホテルといった一流の現場を経験してきたシェフは、フレンチをベースとしたしっかりとした技術を身につけている。30歳で独立。
料理の軸にあるのは、「食材を無駄にしない」という哲学。
野菜の皮、魚の骨や頭。一般的には捨てられてしまう部分にこそ、味の本質があると知っている。
そこから丁寧にブイヨンを取り、料理に重ねていく。
その一手間一手間が、結果として“優しいのに深い”味わいを生み出している。
特に印象的なのがパスタだ。派手さはない。しかし一口食べると、じわっと広がる旨みがある。
後から「なぜ美味しいのか」を考えたくなる味だ。
そこには技術だけではなく、積み重ねてきた時間と誠実さがある。
現在は地元の常連客に加え、週末には県外からの来店も増えている。
店の魅力が、ゆっくりと外へ広がり始めている証だろう。
トロアの森が仕立てる「ホタルイカと春菊のピリ辛トマトソース」
富山湾の宝石を、一皿の中でどう生かすか
同店が仕立てる
「富山県産ホタルイカと春菊のピリ辛トマトソース」
料理は、ただ素材を並べれば美味しくなるわけではない。
どの食材を、どの順番で、どんな意味を持たせて使うのか。
そこに料理人の技術と思想が出る。
同店で出会った期間限定パスタ
「富山湾の宝石 ホタルイカと春菊のピリ辛トマトソース(アラビアータ)」
この一皿には、まさにその“見えにくい仕事”が詰まっていた。
使うのは、この時期ならではのホタルイカ。
シェフによれば、ホタルイカは旬になると兵庫産なども出回るが、
やはり富山のものは形がきれいで、味も良いという。
卵を抱いた富山産のホタルイカは、見た目にも美しく、旨みの厚みも違う。
同店では扱いやすさと仕上がりの安定感から、ボイルのホタルイカを使っている。
だが、この料理の価値は「旬のホタルイカを使っています」だけでは終わらない。
このパスタはガーリックオイルに鷹の爪を効かせ、さらにケッパーとアンチョビを加える。
これは単なるアクセントではない。ホタルイカ特有のワタの風味を、ただ強く出すのではなく、複雑さの中にまとめていくための仕事だ。
言い換えれば、素材の個性を消さずに、料理として着地させるための調整である。
さらに面白いのが、春菊の使い方だ。
春菊は最初から全部を入れるのではなく、茎を先に、葉を後から入れる。茎で香りの土台を作り、葉は色と香りが飛ばないタイミングで加える。
こうした時間差の仕事が、皿の中に食感と香りの立ち上がりを生んでいる。
つまりこの一皿は、ホタルイカを主役にしながらも、 その脇を固める素材がすべて意味を持って配置されているのだ。
しかも、ここには店の苦労もにじむ。 本来なら、もっとホタルイカを前面に出し、量も増やして勝負したい。だが、価格との兼ね合いがある。単価を抑えながらも満足度を下げないために、春菊を合わせ、ソースを工夫し、全体の完成度を上げている。
これは妥協ではなく、限られた価格帯の中で価値を最大化する企業努力だ。
料理を食べた時、「美味しい」で終わることもできる。
けれど、その奥にある手間や意図を知ると、一皿の見え方は変わる。
富山湾の宝石と呼ばれるホタルイカを、 ただ旬だから使うのではなく、どう生かし切るか。
同店のこのパスタは、その問いに対する、シェフなりの丁寧な答えなのだと思う。

店名: レストラン トロアの森(き)
代表:新見勝也
住所: 館林市苗木町2543−4
TEL&FAX: 0276〜71〜1068
営業時間:ランチ: 11:00〜15:00 (ラストオーダー 14:15) ディナー: 18:00~22:00 (ラストオーダー 21:00)
定休日:月曜日 木曜日のディナー
