Column

メディアトーキング物語 第4回

連載コラム|メディアトーキング物語 第4回
一人旅が教えてくれた“価値”の正体──
人は親切を忘れない。地域も企業も同じだ。
――メディアトーキング代表・山元将永

ログハウスの仕事を辞め、群馬で完全な“一人”になった頃、
私は心と体を癒すように、ふらりと旅に出ました。

動機は「龍馬に会いに行こう!」
またしても場当たり的な発想と行動です。

旅の途中で学生時代の友達が住んでいるところを通れば、その友達の家に泊めてもらい、
歴史の名所があればふらりと立ち寄る…。
目的は「龍馬のいる土佐に行く!」くらいで、あとは群馬からただただ西へ向かう。
ただ気の向くままに車を走らせるだけの旅でした。

しかしこの一人旅で、
私は人生を変えるほどの気づきを得ることになります。



■ 人は「味」や「景色」ではなく、“親切”を覚えている

旅の楽しみといえば、名物料理や景色です。
しかし、時間が経つとその記憶はだんだん曖昧になっていきます。

ところが──
たった一つだけ、むしろ時間とともに輝きを増す記憶があります。

それが、親切です。


■ 香川県での“忘れられない親切”

香川県を旅したとき、私はこう思いました。
「本場の讃岐うどんを食べたい!」

しかし当時はスマホもなく、情報源は自分の足だけ。
どこに名店があるのか皆目わからず、思い切って通りすがりの男性に声をかけました。

「すみません、讃岐うどんの美味しい店を教えてください」

するとその男性は笑顔で、
「僕についてきて!」
と自分の車を出し、わざわざお店まで先導してくれたのです。

そして、
「この店の◯◯を食べて、あの店の◯◯を食べて!」
とおすすめまで教えてくれました。

もちろんうどんは最高に美味かった。
ですが、不思議なことに、私の記憶に一番強く残っているのは、

そのやさしさそのものです。

■ フラッと立ち寄った喫茶店でも…

別の旅先では、ふと入った喫茶店で起こった出来事も忘れられません。

私は食事を注文し、しばらく店内を眺めていました。
すると店主らしき女性がやってきて、静かにコーヒーを置きながらこう言いました。

「遠くから来たんでしょう? これ、サービスね」

たった一杯のコーヒー。
しかしその一杯には、旅人の心を温め、孤独を溶かし、
「またこの町に来たいな」と思わせる力がありました。


正直、私はその店の名前すら覚えていません。
でも、あのときの“気持ち”だけは鮮明に覚えているのです。

こうした小さな親切が、旅の質を一変させる。
それは、人生を動かす力すら持っているのだと、私はこのとき知りました。

■ 地域も企業も、“親切の総量”で評価が決まる

その後、私は記者として数千社の企業と向き合ってきました。
そこで気づいたことがあります。
設備が最新でも
 技術が優れていても
 オフィスが立派でも

人の心に残るのは、やはり
“温かさ”だということです。

企業の場合、その温かさは日常の中に潜んでいます。

社長のさりげないひと言
社員のちょっとした気遣
商談前の短い雑談
契約とは関係のない相談ごと
相手を思っての“お節介”


こうした小さな親切の総量が、その会社の“魅力”になるのです。

私は今、こう思っています。
企業文化とは、立派な理念やカッコいいスローガンではなく、
日常の親切でできているのだと。

香川で出会った案内してくれた男性の親切。
喫茶店で出された一杯のサービスコーヒー。
それと同じ温度のものが、魅力ある企業には必ず流れています。

■ 親切とお節介──メディアトーキングの行動哲学

旅で得たこの「親切の本質」は、
そのままメディアトーキングの哲学になりました。

メディアトーキングは「会う」「話す」ことで価値を生む仕事。
だから私は、動くときに必ずこう自分に言い聞かせています。

まずは親切であれ。
次に、お節介であれ。

たとえば、経営者同士をつなぐとき。

この社長とこの社長が会えば、必ず化学反応が起こる
この企業の強みは、あの企業と組めばもっと生きる
この人とあの人は、人生レベルで縁が深まる

そう感じたときだけ、私は“つなぐ”のです。
そこには、相手の未来を考えた
“親切の火種”が必ずある。


■ 小さな親切が、人も仕事も動かす

振り返ると、私がいちばん心に残している旅の思い出は、
香川の案内人と、喫茶店の一杯のコーヒーです。

親切は、人の心を前向きにし、
人の行動を変え、
ときに人生の方向すら動かす力がある。

そしてこの力こそ、
メディアトーキングが信じている
“価値の源泉”なのです。

私は今でも、あの旅の光景をよく思い出します。

「あの人たちのように、人の背中をそっと押せる存在でありたい。」

その思いが、私の原点であり、
メディアトーキングという仕事の根っこに流れる精神です。

次回・第5回では、
輸入家具会社で学んだ「第一印象力」

そして独立して痛感した“社長業のリアル”について語ります。