有機認証を取得している農家・大野さんに、取得の意味、メリット、そして“現場が抱える壁”を伺いました。(前編)

有機認証(有機JAS)とは?取得のメリット・手間・費用を農家が本音で解説【対談要約】
有機認証(有機JAS)は「第三者が証明する信頼」。一方で記録や検査など手間と費用がネックに。畑ごとの認証、転換期間中有機、認証機関の違いまで農家の実体験で整理します。
お届けする農家の日曜系ポッドキャスト|対談(前編)要約有機認証(有機JAS)は「信頼の証明」──でも、なぜ広がりにくいのか?【対談要約】
有機認証を取得している農家・大野さんに、取得の意味、メリット、そして“現場が抱える壁”を伺いました。前編
この記事でわかること
有機認証(有機JAS)とは何か(自己申告との違い)
取得に必要な作業・書類・検査のリアル
「畑ごと認証」「転換期間中有機」など制度のポイント
なぜ取得が広がりにくいのか(手間・費用・制度設計)
対談の中心になったのは、「有機認証とは何か」を一般の人にもわかる言葉に置き換えること。
大野さんは、有機の骨格を「化学合成された農薬・化学合成肥料を基本使わない」「遺伝子組換え技術を使わない」と整理した上で、
それを農家の自己申告ではなく第三者(認証機関)が書類と現地確認でチェックして証明するのが“認証”だと説明します。
ポイント
「有機っぽい」ではなく、第三者が確認するから信頼になる
認証機関は複数あり、基準は統一されているが運用・料金体系などに違いがある
取得の肝は「記録」:道具の扱いまで細かくチェックされる
認証取得で最も大きい負担として語られたのが書類=記録です。
何月何日にどの区画で、どんな作業をし、どんな資材を使ったか――その積み重ねが求められます。
さらに、鍬やトラクターのロータリー・タイヤなど一般栽培の畑に入った機材を有機の畑に入れる場合は洗浄が必要で、
洗った事実すら記録対象になるほど細かい運用だといいます。
現場のリアル
「有機でやっています」を証明するために、作業・資材・機材の管理が“記録として残る形”で求められる。
その丁寧さが信頼につながる一方、日々の負担にもなりやすい。
誤解されがちな点として、認証は農家という主体に付くというより、畑(区画)に対して付くイメージが語られました。
畑が複数ある場合は検査対象も増え、基本的には「全部の畑を回る」運用になりがち。
さらに、条件に合わない畑があれば「ここはダメ」と判定されるケースもあるといいます。
有機認証は、過去の管理状況が重要です。化学資材の使用歴や周辺環境も含めて確認が必要になるため、
「耕作放棄地だから安全」とは一概に言えません。
一方で、一定期間“有機的な管理”ができていると判断されれば、状況によっては早く認証に近づける場合もあるとのこと。
また、正式な有機認証に至る前段階として
「転換期間中有機」という位置づけ(シール等)がある点も話題になりました。
大野さんは、有機認証が農家全体の中でまだ少数(肌感として「1%前後」と語られることが多い)である背景に、
手間(記録の多さ)と費用が大きいと指摘します。費用は認証機関や面積・区画数で変動し、
「畑1枚ごと」「一定面積以上で定額」など体系もさまざま。
新規就農でスモールスタートする人ほど、費用対効果が見えづらく“後回し”になりやすい現実が語られました。
取得の動機として大野さんが挙げたのは、まず取得者が少ないからこそ目立つ(差別化できる)こと。
そして自分の農業のコンセプトと有機の考え方が一致していたことでした。
「手間はかかるが、第三者が証明する信頼は大きい」──この一点が、有機認証の価値として強調されます。
制度の課題:認証機関が多く、選び方が難しい
対談では制度設計の課題も掘り下げられました。認証機関が複数あることで、
料金体系だけでなく、加工(ジュース・ジャム等)や輸出など“どこまで認証できるか”の範囲が変わる場合があるという指摘です。
「近いから」「安いから」で選ぶと、後からやりたいこと(加工・輸出)に対応できず、変更が必要になるケースもあるとのこと。
国が一覧を出している情報はあるものの、現場が迷いにくい形での支援や統一運用への期待も語られました。
まとめ:有機認証は「信頼」を買う制度。ただし、負担も大きい
有機認証の本質は第三者が確認する“信頼の証明”
一方で記録の多さと費用が取得の壁になりやすい
認証は畑(区画)ごと、移行期には転換期間中有機もある
認証機関選びは将来の加工・輸出まで見据えて設計が必要
インタビュアー
メディアトーキング 山元将永(やまもと のぶひさ)