Column

第2回やりたいことがない若者がジーンズ屋で見つけた 「会話の手応え」 ――メディアトーキング代表・山元将永ーー

やりたいことがない若者がジーンズ屋で見つけた
「会話の手応え」
――メディアトーキング代表・山元将永ーー

■ 流されるだけの学生時代

中学・高校と進むにつれ、私は 「自分は本当に何者でもない」 と感じることが増えていきました。
成績はオール3。特別な才能もない。
自分が何をしたいのかも分からない。

とりあえず“無難”だと思った進学校に入りましたが、
そこでもやはり成績はケツから数えたほうが早い。

「俺、何をしたいんだろう?」

そう自問自答しながら、ただ流されるように日々を過ごしていました。


■ 父親の何気ない一言が胸に刺さった

そんな高校時代、忘れられない出来事があります。

ある日、酔った父がふと口にしました。

「仕事ってのは誰かの役に立つほうがいいぞ。
俺は少しは社会に貢献してると思う。」

普段、仕事の話をほとんどしない父の“初めての仕事観”。
子ども心に、父が自分の仕事に誇りを持っていることを感じました。

この言葉は私の胸のどこかに静かに刺さり、後の価値観を形づくります。

  • 仕事とは人のためにするもの
  • 誰かを喜ばせることが価値になる

この2つが、私の“根”になりました。


■ やりたいことがないまま進んだ大学生活

大学では経済学部流通学科に進みました。
本当は歴史が好きで史学部に行きたかったのですが、
友人の蔵書数に圧倒されて早々に断念(笑)。

相変わらず、
「自分は本当は何をしたいのか?」
と分からないまま過ごしていました。


■ 人生を動かした転機 ―― ジーンズ屋のアルバイト

そんな“宙ぶらりん”の日々を変えたのは、ジーンズ屋のアルバイトでした。

友人に誘われて何気なく始めたそのバイトが、
人生を大きく動かすきっかけになりました。

店に入ってくるお客さんは、みんな違う。
性格も、好みも、雰囲気も違う。

その人をよく観察しながら、

  • 「今日はどんな気分なんですか?」
  • 「そのジーンズ、裾を少しロールアップすると似合いますよ」

そんなふうに声をかける。

最初はぎこちない接客も、続けるうちに楽しくなっていきました。

会話ひとつで、相手の表情が変わる――
その瞬間の喜びに、私はどんどんのめり込んでいきました。


■ “おしゃべり”が武器になると知った

もともとおしゃべりが好きでしたが、
ジーンズ屋でそれが 「武器になる」 と気づきます。

  • 話すことで距離が縮まる
  • 相手の悩みや好みが見えてくる
  • 「ありがとう」と言ってもらえる
  • 自分の言葉で誰かの役に立てる

どれも当時の私には強烈な衝撃でした。

持ち前のおせっかい気質も相まって、私は常に

「どうしたらもっと似合うジーンズを選んでもらえるか」
「どうしたらこのお客さんは喜んでくれるか」

と考えるように。

その姿勢を見て、店長からひと言。

「お前は接客が向いてるな」

これが私にとって “初めての肯定” でした。


■ 会話は「人とつながる最高のツール」

ジーンズ屋で学んだのは、接客や販売以上のことでした。

  • 接客とは、商品を売ることではなく 人と向き合うこと
  • 会話は、相手とつながるための 最高のツール

この感覚は、後に新聞記者になったときも、
メディアトーキングを立ち上げたときも、
ずっと自分の軸になり続けています。

いま振り返ると、
私がジーンズ屋で学んだのは

“人を理解する楽しさ”
“会話の手応え”

でした。

まだ将来のビジョンは見えていませんでしたが、

「人と話す仕事が向いているかもしれない」

という感覚が、ここで静かに育ち始めたのです。


次回予告

第3回
「デカいことがしたい!アメリカへの憧れと、場当たり的人生が“人脈の原点”に変わるまで」

ここから物語は一気に動き始めます。