「止まったら駄目なんです」動きながら商機をつかむ、荻原物産グループ・1社、株式会社OMC(本社:太田市矢島町)の佐藤賢社長の飲食事業
「自分は、回遊魚のように常にぐるぐる動いているんです」
そう笑いながら話すのは、荻原物産グループ・1社、株式会社OMCの佐藤賢社長。金型関連事業をはじめ、再生可能エネルギー、飲食、キッチンカーなど、多角的な事業に携わっている。
一見すると、それぞれの事業に関連性がないように見えるかもしれない。しかし、佐藤社長の話を聞いていると、そこには一つの共通点がある。
目の前に現れた商機を見逃さず、まずは動いてみること。そして始めた後は、感覚だけに頼らず、数字と現場を冷静に見ること。
「面白そう」から始まった飲食事業
佐藤社長が現在、特に力を入れているのが、ナポリタン専門店「スパゲッティーのパンチョ」。
飲食事業への参入を検討する中で、いくつかの候補からパンチョを選びました。決め手の一つは、ナポリタン専門店という分かりやすさと、ほかにはない面白さだったという。
「ちょっと面白そうだと思ったんです」
この言葉だけを聞くと、直感で事業を決めているようにも感じるが、しかし佐藤社長は勢いだけの経営者ではない。
事業を始めてみると、想定していた以上に利益率が低く、簡単には利益が残らないことが分かった。そこから原価、人件費、店舗運営の仕組みを見直し、事業として成り立たせるための試行錯誤を重ねてきた。
興味を持ったら動く。しかし、始めた後は数字から逃げない。
そこに佐藤社長の経営者としての強さがある。
宇都宮店が想定を超える反響
太田店に続いて開店した宇都宮店は、当初の想定を上回る来店客を集めた。
宇都宮店の工事中の様子がSNSで注目されたこともあり、開店前から多くの関心が寄せられました。オープン後は周辺の交通にも配慮が必要になるほど来店が集中し、佐藤社長自身も「想定していた売上の最大値を超えた」と話す。
ただし、現在の盛況ぶりを手放しで喜んでいるわけではない。
「飲食店は、オープン時のピークから売上が3割、4割落ちたところが本当の実力です」
話し方は豪快でも、経営を見る目は実に冷静だ。
一時的な話題性を事業の実力とは考えず、ブームが落ち着いた後に、どれだけ地域のお客様から支持される店をつくれるかを見ている。
宇都宮店の成功を受けても、むやみに次の店舗を出すつもりはないという。以前は館林への出店も検討していたが、現在は、よほど条件の良い場所でなければ新たな出店はしない方針。
成功したときほど慎重になる。その判断にも、数多くの事業を経験してきた経営者の姿勢が表れている。
人を雇うことも地域への貢献
佐藤社長は信用金庫出身。そのため、経営の根底には常に「地域のために」という思いがある。
もちろん、事業である以上、利益を出すことは欠かせない。しかし、利益を上げること自体が最終目的ではない。
事業を成長させ、雇用を生み出し、そこで得たものを地域へ返していく。佐藤社長が事業に取り組む理由は、そこにあるのだろう。
これまで、アルバイトを含めて延べ約100人の雇用を生み出してきた。パンチョの店舗やキッチンカー事業も、単に商品を販売するだけでなく、地域の中に新しい仕事と人の流れを生み出している。
桐生市では、市役所の仲介を受けながら、毎週月曜日にキッチンカーを出店。地域を盛り上げたいという思いを、言葉だけではなく行動に移している。
人は責任を持つことで変わる
急速に事業を広げる一方で、人材の採用や育成には苦労もあると話す。
飲食業界では人手不足が続き、時給を上げるだけでは人材を確保できないのが現状。働き始めても、長く続けてもらうためには、給与とは別の関係づくりが必要になってくる。
佐藤社長は、スタッフに土産を渡したり、自らカレーを作って振る舞ったりしながら、一人ひとりとの距離を縮めているという。
一方で、ただ優しいだけではない。
アルバイトから入社した若干20歳の女性スタッフを店長に昇格させ、責任ある立場に置くことで、経営側の視点を持ってもらおうと考えた。
若さや経験だけで人を見るのではなく、その人の持つエネルギーを別の方向へ向ける。これも佐藤社長らしい人材育成だ。
事業は完成させるものではなく、動かし続けるもの
佐藤社長の話には、飾った成功談がほとんどないように感じた。
利益率が低かったこと、人が集まらないこと、従業員の対応に苦労していること、事業を整理したこと。失敗や課題も隠さず、率直に話す。
しかし、それ悲観する様子もない。
うまくいかなければ仕組みを変える。採算が取れなければ整理する。可能性があれば、まず試してみる。そうして事業を止めることなく、動かし続けている。
「回遊魚のように動いている」という言葉は、単に忙しくしているという意味ではない。
人に会い、現場を見て、商機を探し、決断する。失敗すれば修正し、成功したときこそ冷静に次を考える。
飲食事業の背景にあったのは、派手な戦略ではなく、止まらずに試行錯誤を続ける佐藤社長の経営姿勢だ。
宇都宮店の本当の評価が決まるのは、開店直後の熱気が落ち着いてからというが・・
佐藤社長はすでに、その先を見ている。
