Pick up

城下町・館林に似合う「小料理」という店 最初の一品から始まる「小料理 なつよ」の物語

城下町・館林に似合う「小料理」という店

最初の一品から始まる「小料理 なつよ」の物語

館林市城町に店を構える「小料理 なつよ」。

今回取材をして、まず惹かれたのが「小料理」という看板だった。

居酒屋、ダイニング、バルなど、飲食店の呼び方も多様になった現在、「小料理」を掲げる店を見かける機会は少なくなったように感じる。

そして、その響きがなんとも館林に似合う。

かつて館林城を中心に城下町として発展してきた館林。その「城町」に、小料理の暖簾が掛かっている。

それだけでも、どこか物語を感じさせる店だ。

料理、着物、器。「好き」から始まった店

「小料理 なつよ」がオープンしたのは2025年7月24日。

店を切り盛りするのは、店名にもなっている女将の安樂岡奈津代さん。

もともと料理が好きで、着物が好き、器も好きだった。

そんな奈津代さんに、ご主人が「料理が好きなんだから、こういうのをやってみたら?」と話したことが店を始めるきっかけの一つだったという。

最初は冗談半分だった話も、夫婦で話しているうちに少しずつ現実的になっていった。

将来を考えた時、「仕事を持っている方が元気でいられる」という思いもあった。

現在は奈津代さんが厨房を中心に担当し、ご主人がお客様の対応をすることも多い。

夫婦ともに食べること、飲むことが好きで、全国を旅行しながら各地の料理や酒を楽しんできた経験も、現在の店づくりにつながっている。

着物の女将。でも、気取っていない

金曜、土曜には奈津代さんが着物姿で店に立つ。

「小料理」「城下町」「着物の女将」。

ここまで書くと、少し敷居の高い店を想像するかもしれない。

ところが実際に話してみると、その印象は良い意味で裏切られる。

とても気さくで、ノリがいい。

冗談を言えばすぐに返ってくる。

それでいて、立ち居振る舞いや話し方にはどこか品がある。

親しみやすいのに、品がある。

この絶妙なバランスこそ、「小料理 なつよ」という店の雰囲気をつくっているように感じた。

肩肘を張る必要はない。

でも、いつもの居酒屋とはちょっと違う。

この「ちょっと」がいい。


一番力を入れている料理は「お通し」

取材の中で「一番力を入れている料理は何ですか?」と聞いた。

馬刺しなど人気の料理はいくつもある。

しかし、奈津代さんから返ってきた答えは意外だった。

「お通しです」

なぜ、お通しなのか。

その理由を聞くと、この店の料理に対する考え方がよく分かった。

お客様が店に入り、最初の一杯を注文する。

その時が一番お腹を空かせていて、お酒も一番おいしく感じる。

そこで最初に口にする料理が「お通し」だからだ。

だから手を抜かない。


お通しは、店との「ファーストインプレッション」

この話は非常に面白かった。

メディアトーキングでは多くの飲食店を取材してきたが、個人的にも**「お通しに手を抜いていない店には、良い店が多い」**という印象を持っている。

もちろん、これは客観的な統計ではなく、あくまでこれまで店を訪ねてきた中で感じてきたことだ。

しかし、奈津代さんの話を聞いて、その理由が少し分かった気がした。

お通しとは、その店で最初に口にする料理。

言い換えれば、

「店とお客様とのファーストインプレッション」

なのだ。

小さな一皿を口にして「おっ」と思う。

すると、「次は何が出てくるんだろう」という期待が生まれる。

奈津代さん自身も、客として飲食店を訪れた時、最初に出てきた料理を見てワクワクした経験があるという。

その感覚を、自分の店を訪れた人にも味わってもらいたい。

だからこそ、「小料理 なつよ」は最初の一品を大切にしている。

料理そのものだけではなく、**お客様が店で過ごす時間をどう始めるかまで考えている。**

そこに、この店らしさがある。


8席だからこそ生まれるもの

店内は8席ほど。

決して大きな店ではない。

しかし、取材をしながら「むしろ、この大きさだからいいのではないか」と感じた。

カウンター越しに女将と話す。

料理の話をする。

仕事の話になる。

そこから隣に座っていた人が会話に加わる。

気が付けば、初めて会った人同士が話している。

大きな店では生まれにくい距離感が、ここにはある。

実際、店には若い農家をはじめ、さまざまな仕事をする人が訪れているという。


飲食店から「街のハブ」へ

ここからは、取材を通じてメディアトーキングから提案したことでもある。

「小料理 なつよ」が、料理と酒を楽しむだけでなく、**人と人がつながる小さなハブになったら面白い。**

メディアトーキングは「会う」「話す」ことから、人と人、企業と企業をつなぎ、その先に生まれたものを物語として発信している。

その活動をしていると、新しい仕事やプロジェクトは、必ずしも正式な商談から生まれるわけではないことが分かる。

「こんなことで困っているんだよね」

「それなら、知っている人がいるよ」

そんな何気ない会話から始まることも多い。

飲食店は本来、そうしたことが自然に起こる場所でもある。

奈津代さんがお客様を知り、

「この人と、この人が会ったら面白いかも」

と思ったらつないでみる。

そこから仕事が生まれるかもしれない。

友人ができるかもしれない。

新しい企画が始まるかもしれない。

料理を提供する場所から、人と情報が行き交う場所へ。

8席という小さな空間だからこそ、そんな可能性を感じる。


「背伸びせず、自分の身の丈に合った商売を」

奈津代さんが大切にしている言葉も印象に残った。

飲食業の先輩から言われたという、

「お客さんはいろいろ言うけれど、自分が出したいものを出せばいい」

そして、

「背伸びせず、自分の身の丈に合った商売をすればいい」

という言葉だ。

店を大きくすることだけが商売の成功ではない。

自分たちのできる規模で、自分たちが出したい料理を作り、お客様との時間を大切にする。

そんな商売のあり方もある。

開店から1年ほどでボトルキープの棚がいっぱいになり、増設した棚も埋まりつつあるという。

この店で時間を過ごしたいと思う人が、少しずつ積み重なってきた結果なのだろう。


城下町に、こんな店があるということ

地域の魅力というと、大きな観光施設やイベント、歴史的建造物などに目が向きがちだ。

もちろん、それらも大切だ。

しかし、街をつくっているのは、そこで日々商売をし、人を迎えている一軒一軒の店でもある。

夕暮れの城町。

小さな店の暖簾をくぐる。

着物姿の女将に迎えられ、カウンターに腰を下ろす。

まず出てくるのは、女将が大切にしている「お通し」。

一杯飲みながら話しているうちに、隣に座った人とも会話が始まる。

派手ではない。

でも、こういう風景が街にあること自体が、一つの文化なのではないだろうか。

城下町・館林に「小料理」という店がある。

そして、そこに人が集まり、話し、時には新しいつながりが生まれていく。

メディアトーキングとしては、これから「小料理 なつよ」という場所から、どんな人のつながり、どんな物語が生まれていくのかも追っていきたい。

小料理 なつよ

住所:群馬県館林市城町4-13
女将:安樂岡奈津代
営業時間:17:00~23:00(ラストオーダー22:30)
定休日:日曜日・月曜日
電話:080-5521-9284

※営業時間・定休日等は変更となる場合があります。来店の際は店舗へご確認ください。