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こんなに「優しい味」があるんだ 館林「縁酒 との咲」で感じた、料理に表れる人柄!

こんなに「優しい味」があるんだ
館林「縁酒 との咲」で感じた、料理に表れる人柄

飲食店を取材していると、料理がおいしい店にはたくさん出会う。

素材がいい。腕がいい。盛り付けがきれい。珍しいものが食べられる。

もちろん、それぞれに魅力がある。

でも今回、館林市近藤町にある「縁酒 との咲」で料理を食べながら感じたのは、それとは少し違うものだった。

「料理って、作る人の人柄まで出るんだな」

そんなことを改めて感じさせてくれる店だった。


青森の食文化を館林で

店主の外崎美智子さんは青森県出身。ご主人の仕事の関係で関東へ移り住んで約40年になるという。

子どもの頃は、新鮮な魚介類が当たり前のように身近にあった。生きたナマコを自分でさばき、タコがおやつになることもあったというから、海なし県・群馬で暮らす私たちからすると驚くような食環境だ。

そんな美智子さんの故郷の味を楽しめるのが「との咲」の大きな魅力の一つ。

青森の郷土料理をはじめ、若生(わかおい)昆布で包んだおにぎりなど、館林ではなかなか出会うことのできない料理が並ぶ。

日本酒の選び方も面白い。

誰もが名前を知っている有名銘柄ばかりを並べるのではない。「青森の人なら知っている」といった、地元に根付いた少しマニアックな酒を意識して揃えているという。

取材時に見せてもらった「豊盃」などもその一つ。

日本酒が好きな人なら、知らない銘柄との出会いそのものが楽しみになる。

「東北の味」のイメージが変わった

そして、実際にいくつか料理をいただいて驚いた。

とにかく味が優しい。

私自身、東北の郷土料理には、どこか「塩気が強い」「味付けが濃い」という先入観を持っていた。

ところが、「との咲」の料理はまったく違った。

口に入れた瞬間に強い味が押し寄せてくるのではなく、素材そのものの味がちゃんと分かる。食べ進めても疲れない。

焼きおにぎりも、若生昆布のおにぎりも、酒の肴も、どこかほっとする。

思わず、

「こんなに優しい味があるんだ」

と感じた。

そして美智子さんと話しているうちに、その理由がなんとなく分かったような気がした。

料理の味が、美智子さんそのものなのだ。

柔らかくて、気さくで、相手に余計な緊張をさせない。

取材資料にもあるように、客の好みに合わせて白身魚に合う醤油を別に用意するなど、料理だけでなく細かなところにも心遣いがある。

料理はレシピだけで作るものではない。

「誰に食べてもらうのか」まで考えることで、その人の味になる。

「との咲」の料理を食べていると、そんなことを考えさせられる。


魚は週に一度、富山から

もう一つ、この店の面白さが魚だ。

魚介類は週に一度、富山から直送してもらっている。

美智子さんの妹が富山でイタリアンレストランを経営していることから生まれた仕入れルートで、その時々によって珍しい魚が届くこともあるという。

青森の郷土料理があり、富山から魚が届き、それを寿司職人である義理の息子が料理する。

昼間は加須市の寿司店で働き、夜になると「との咲」の厨房に立つ。チェーン店勤務などを経てきた経験を生かしながら、ここでは自分の裁量で料理を作れることにやりがいを感じているという。

美智子さんの家庭的な味と、料理人として培ってきた技術。

この二つが同じカウンターの中にあるのも、「との咲」の面白いところだと思う。


「縁酒」という名前が似合う店

取材した日も、カウンターには常連客が集まり、自然に会話が生まれていた。

初めて来た人でも、その輪の中へいつの間にか入っていけそうな雰囲気がある。

実際、料理人として館林に地縁がなかったマスターも、この店を始めてからたくさんの人と知り合い、「友達みたいな人がいっぱいできた」ことがうれしいと話していた。

美智子さんにとってもうれしい瞬間がある。

青森出身のお客さんが訪れた時だ。

故郷を離れて長い年月が経っても、津軽弁で話せば一瞬で青森へ戻れる。そんな会話が店のカウンターで生まれる。

考えてみれば、「縁酒」という名前が実によく似合う。

酒があって、料理があって、そこに人が集まる。

知らなかった人同士が話し始める。

そして、新しい縁が生まれる。

縁が酒を通じてつながり、やがて「咲いて」いく。

勝手な解釈かもしれないが、「縁酒 との咲」という店名を見ながら、そんなことを思った。

派手な料理で驚かせる店ではない。

「すごいだろう」と主張するような店でもない。

青森の料理があり、珍しい酒があり、富山から届く魚があり、カウンターには人の会話がある。

そして、その真ん中に美智子さんの笑顔がある。

料理を食べに来たはずなのに、帰る頃には少しだけ気持ちまで柔らかくなっている。

「優しい味」というのは、舌で感じる味だけではないのかもしれない。

人がつくり、人が食べ、人と人が話す。

その全部を含めて「味」になる。

「縁酒 との咲」は、そんなことを感じさせてくれる店だった。

縁酒 との咲
住所:群馬県館林市近藤町563-2
営業時間:17:00~22:00(ラストオーダー21:30)
定休日:月曜日・隔週日曜日
電話:090-1259-5275
Instagram:@ensyu_tonosaki

※営業日等は変更になる場合があります。最新情報は店舗へご確認ください。