Column

「優しい味」が、ここまで記憶に残る理由

取材を重ねてきた記者が、完全に心を持っていかれた店

記者として、これまで数多くの飲食店を取材してきた。
美味しい店も、話題の店も、一通りは見てきたつもりだった。
だが——
館林の「トロアの森」は、正直、完全に心を持っていかれた。
派手さはない。
強烈なインパクトを狙った料理でもない。
それでも、なぜか記憶に残り続ける。
その理由は、おそらく「優しさ」だ。
4月22日、この日の日替わりパスタランチは2種。
・新玉ねぎとハムのカルボナーラ
・えのき茸たっぷり 大葉の和風ペペロンチーノ
特に印象的だったのが、和風ペペロンチーノだ。
エノキは、ただ入っているのではない。
口に入れた時の食べやすさを考えたサイズに整えられている。
そして、味の決め手は“白だし”。
これを隠し味に使うことで、ペペロンチーノでありながら、どこか和のニュアンスを感じさせる仕上がりになっている。
一口食べると、まず感じるのは“強さ”ではない。
むしろ逆だ。
とにかく、優しい。
だが、その優しさの中に、しっかりとした輪郭がある。
ぼやけていない。だから記憶に残る。
量も絶妙だ。
私はかなり食べる方だ。
通常であれば「もう少し欲しい」と感じるボリュームかもしれない。
だが、不思議と物足りなさを感じない。
むしろ、「しっかり食べた」という満足感がある。
これは単純な満腹ではなく、
味と構成による“心の満足”だろう。
世の中には、パンチのある料理が多い。
強い味は分かりやすく、インパクトも出しやすい。
だが、ここまで“優しい味”で、
それでもなお強烈に印象に残る料理は、そう多くない。
シェフの人柄が出ている——
そう言ってしまえば簡単だが、これはおそらくそれだけではない。
フレンチをベースにした確かな技術。
その土台があるからこそ、この繊細なバランスが成立しているのだと思う。
そしてもう一つ、印象に残ったのがジェノバピザ。
焼きたての生地に広がる、バジルの香り。
シンプルな構成だが、余計なものがない分、素材の鮮度がダイレクトに伝わる。
気づけば、「もう一枚いけるな」と思っている自分がいる。
トロアの森の料理は、派手ではない。
だが、静かに、確実に、食べる人の中に残る。
“また食べたい”ではなく、
“またあの時間を味わいたい”と思わせる店だ。
この感覚は、そう簡単に出会えるものではない。

店名: レストラン トロアの森(き)

代表:新見勝也

住所: 館林市苗木町2543-4

TEL&FAX: 0276~71~1068

営業時間:ランチ: 11:00~15:00 (ラストオーダー 14:15) ディナー: 18:00~22:00 (ラストオーダー 21:00)

定休日:月曜日 木曜日のディナー