Column

メディアトーキング物語 第8回

第8回 「仕掛けるメディア」という哲学 
強みを見抜き、価値を掘り起こし、
未来を動かすためにメディアトーキングが存在する理由
(キワニスクラブ編)
 メディアトーキング代表・山元将永

第7回まででお話ししてきたように、
私は41歳で新聞記者という“天職”に出会い、
「記事を取りに行くのではなく、価値を作りに行く」
という感覚に辿り着きました。
取材を通じて断片的な情報を集め、
社長同士をつなぎ、
新しい商品や企画が生まれていく。
そのプロセスを何度も目にするうちに、
私はこう感じるようになります。
「自分は、取材をしているというより、
 未来のきっかけを仕掛けているんだ」
第6回で触れた
「情報屋」「懐に入る力」「安心する顔がいた」という感覚。
第7回で言語化した
「価値を作りに行く」「仕掛けるメディア」という発想。
第8回は、それらが
ビジネスの世界を越え、社会貢献へと自然に広がっていった話です。
つまり、
群馬キワニスクラブ設立に至る物語を通して、
「仕掛けるメディア」という哲学の“本当の正体”を
少し深く掘り下げていきたいと思います。

■ 1 人は、自分の一番の強みに気づいていない

「もったいない価値」は、そこら中に眠っている
これまで3000社以上の社長と会ってきて、
私が確信していることがあります。
人は、自分の一番の強みに気づいていない。
どれだけ優れた技術があっても、
どれだけ誇るべき歴史や商品があっても、
本人は案外、こう言うのです。
「いやいや、うちは大したことないよ」
「そんなの、どこでもやってます」
「うちは弱い会社だから」
でも、外から見ると、
「それ、むちゃくちゃすごいですよ?」
ということが本当に多い。
私はよく社長に、こう伝えます。
「社長、それ、他社にはありませんよ」
すると、社長の目が丸くなる。
「え? そうなの?」
この瞬間が、私はたまらなく好きです。
社長の中では“当たり前”だったものが、
別の業界、別の文脈では“宝物”として輝き出す。
第7回で書いた
「記事にならない情報こそ価値の原石」という話は、
実はここにも直結しています。
一番価値があるものほど、
本人にとっては“見えなくなっている”。
だから私は、
眠っている価値を掘り起こし、
別の場所に持っていくことに、
異常なほどワクワクしてしまうのです。

■ 2 「羊毛が余っているんだよね」

何気ない一言は、伏線として残る
ある日、機械設計をしている社長のもとへ取材に行きました。
その社長は、本業とは別に、
羊やヤギ、ブタ、鶏を育てる
小さな牧場のようなこともしていました。
機械設計と牧場。
一見、何の関係もありません。
でも、その“掛け合わせ”自体が、
すでにその社長の個性でした。
帰り際、その社長がふと、こんなことを言います。
「羊の毛がね、結構余るんだよ。
 捨てるのはもったいないんだけど、
 なかなかいい使い道がなくてさ。
 山元さん、何かに使えないかな?」
私はその場で答えを出せたわけではありません。
でも、こういう
行き場のない価値を聞くと、
私は必ず、心の中にメモを残します。
「羊毛/余っている/ふんわり/温かい/
 何かに使えそう」
このときの羊毛が、
数年後に、
入院している子どもたちに届く
真っ白な人形とつながるとは、
その時点では想像もしていませんでした。

■ 3 閑話休題──Facebookと同級生、そしてキワニスとの出会い

少し話は飛びます。
Facebookが普及し、
同級生たちと再びつながり始めた頃。
私は例によって、
同級生グループを作り、
誕生日を祝ったり、
場を盛り上げたりしていました。
そんな中、
鹿児島に住む同級生のプロフィールに
見慣れない肩書を見つけます。
「鹿児島キワニスクラブ会長」
正直、その時は
「キワニスクラブって何?」
という状態でした。
調べていく中で知ったのが、
キワニスドールという活動です。

■ 4 真っ白な人形「キワニスドール」と、子どもたちの心

キワニスドールは、
顔も服も描かれていない、
真っ白な布製の人形です。
それを入院している子どもたちに渡し、
子ども自身が色を塗り、
世界で一つだけの人形を完成させる。
私はその活動を知った瞬間、
胸を掴まれるような感覚になりました。
「これは、モノを配っているんじゃない。
 子どもたちの“心の動き”を支えている活動だ」
そして、そのとき
頭の片隅に残っていた言葉が、
ふっと蘇ります。
「羊の毛が余っているんだよね」

■ 5 羊毛とキワニスドール──価値がつながった瞬間

キワニスドールの理念を知れば知るほど、
私の中でイメージが膨らんでいきました。
「これ、群馬でもできないだろうか」
羊毛。
真っ白な人形。
入院している子どもたち。
地元の企業と大人たち。
それらが、
頭の中で一つにつながった瞬間。
「もしかして、
 あの羊毛をドールの中身に使えるんじゃないか?」
第7回で書いた
「価値は掛け合わせで爆発する」
という感覚が、
ここでもはっきり形を持ち始めました。

■ 6 「群馬にキワニスクラブがない」

同級生の一言が、背中を押す
調べてみると、
群馬県にはキワニスクラブが存在しない。
その事実を知ったとき、
頭に浮かんだのは、
第6回で書いた、あの感覚でした。
「じゃあ、誰が最初にやるんだろう?」
その問いに、
同級生は軽やかに答えます。
「ジョージ(山元)がやればいいじゃん」
理由はシンプルでした。
「だって、ジョージの仕事って、もともと人をつなぐことだろ?」
この言葉で、
私の中で
メディアトーキングと
キワニスクラブが
一本の線でつながりました。

■ 7 「やまちゃんがやるなら協力するよ」

信頼が、すべての土台になった
設立を決め、
私は何人かの社長に声をかけました。
すると、返ってきた言葉は
驚くほど似ていました。
「キワニスは正直よく分からないけど、
 やまちゃんがやるなら協力するよ」
第6回で書いた
「安心する顔がいた」という言葉。
あれは、
この瞬間のためにあったのかもしれません。
人は、理念より先に
「人」を見ている。
積み重ねてきた関係性が、
ここで静かに力を発揮しました。

■ 8 キワニスクラブは、メディアトーキングのもう一つの顔

キワニスクラブは、
私にとって
メディアトーキングの“別事業”ではありません。
根っこは同じです。
会うこと。
話すこと。
つなぐこと。
眠っている価値を掘り起こすこと。
新しい物語を立ち上げること。
それを
ビジネスでやるか、
社会貢献でやるかの違い。
だから私は、
メディアトーキングと
群馬キワニスクラブを
両輪だと考えています。

■ 9 「仕掛けるメディア」とは、優しさと価値を動かす装置である

仕掛けるメディアとは何か。
それは、
眠っている価値と
眠っている優しさを、
現実世界で動かす装置です。
羊毛。
社長の強み。
子どもたちの心。
同級生との縁。
それらをつなぎ、
未来に向けて動かす。
それが、
私がメディアトーキングをやっている理由であり、
群馬キワニスクラブを立ち上げた理由です。

■ 10 第9回へ──価値をつなぐ人として生きる

次回、第9回では、
もう少し内側の話をします。
なぜ私は、
ここまで「つなぐこと」に惹かれるのか。
なぜ「安心する顔」と言われた瞬間が
決定的だったのか。
価値をつなぐ人として生きる
その哲学について、
じっくりお話しします。